MT5自動売買EA技術サンプル徹底解説|バックテストから運用アドバイスまで

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1. はじめに

自動売買EA(エキスパートアドバイザー)は、FXトレードにおいて取引の自動化を実現する非常に有用なツールです。手動トレードでは見逃してしまうような細かなシグナルや、感情に左右されやすい判断も、EAを活用することで一定のロジックに基づき安定して実行することが可能となります。
本記事では、私自身が独自に開発したMT5用自動売買EAの技術サンプルを紹介します。EAはすでに完成しており、今後フォワードテスト(リアルタイム運用による検証)を進める予定ですが、現段階ではその前段階としてバックテスト(過去データを使った検証)結果を中心に解説します。

なお、今回ご紹介するEAは技術サンプルとして公開しており、基本的に販売は行っておりません。あくまで「自動売買の仕組みや開発思想」「バックテスト結果の見方」など、今後EA開発や運用を考えている方にとって参考になる情報を提供することを目的としています。

また、投資には常にリスクが伴います。掲載しているバックテストの成績は、過去の市場データをもとにしたものであり、将来の運用成果を保証するものではありません。運用の判断はご自身の責任でお願いいたします。

2. EAのコンセプト・設計思想

今回ご紹介する自動売買EAは、長期にわたる実践経験と、相場環境の変化への対応力を重視して設計しています。もともとは「Beatriceシリーズ」として、長年にわたり多様なマーケットで開発・改良を続けてきたものです。しかし、EA業界そのものに疑問を感じる場面も多くなり、私自身、ある時期から業界との関わりを一切絶つことにしました。これには、問題のある既存業者に消極的な「ノンコラボレーション」という形で“攻撃”を加えるという、いわば市場への静かな抵抗の意図もありました。協力者が一人減るだけでも、彼らにとっては大きな痛手となり、やがて業界全体の質の低下や停滞を招くと考えたためです。

それでも、時代の流れとともにEAへのニーズや技術自体は進化を続けています。ここ1年ほど前から再び開発を再開し、新しい手法やアルゴリズムを積極的に検証してきました。最初は正直なところ、失敗作も多く、なかなか安定したパフォーマンスに至らない期間もありました。しかし試行錯誤を重ねる中で、ようやく納得できる成果と安定感が得られるようになったと実感しています。

EAの設計思想としては、かなり保守的なアプローチを取っています。無理なリスクを取らず、想定外の相場急変にも一定の耐性を持つように設計しています。特に直近では、「TACO相場」と呼ばれるような極めて不安定な米国市場の動き――つまりトランプ前大統領の発言や通商政策に大きく影響される相場変動――にも慎重に対応する必要性を強く感じています。
(TACOとは「Trump Always Chickens Out」の略で、市場で高関税などの政策が発表された際に一旦大きく動いても、トランプ氏の発言や方針転換ですぐに元に戻る…という一連の朝令暮改の現象を指します。近年の米市場ではこの影響が特に大きく、投資家にとっては一層注意が求められています。)

このような政治・経済の不確実性が強い環境では、EAの設計そのものに「保守性」と「柔軟なリスク管理」が不可欠です。リターンを追い求めるよりも、いかに大きなドローダウンや不測の値動きに耐えられるか――この視点で開発・運用方針を固めています。

3. バックテスト概要(モックアップデータの掲載)

EAの開発や評価において、バックテストは欠かせないプロセスです。バックテストとは、過去の為替レートや取引データをもとに、EAのロジックを仮想的に稼働させ、実際にどのような成績を収めるかを検証する手法です。フォワードテスト(リアル口座やデモ口座での運用)に先立ち、EAの性能やリスク許容度、ロジックのクセを把握する目的で行われます。

今回ご紹介するEAは、MetaTrader 5(MT5)プラットフォーム上で動作し、Ava Trade Ltd.のヒストリカルデータを使用してバックテストを行っています。バックテスト環境の条件は以下のとおりです。

  • テスト期間
    Beatrice Zenon、Shamir、Elion:2015年1月1日〜2025年6月14日
    Beatrice Ariel:2010年1月1日〜2025年6月14日
  • 対象通貨ペア
    Zenon、Elion、Ariel:USDJPY
    Shamir:EURUSD
  • 使用時間軸
    いずれもM1(1分足)データ
  • 初期証拠金・レバレッジ
    1,000,000円、レバレッジ1:50
  • ロットサイズ・リスク管理
    各EAごとの詳細設定(例:固定ロット、マーチンゲール制御など)は個別に異なりますが、共通してリスク抑制を意識しています。
  • ヒストリー品質
    すべて99%のヒストリー品質で検証済み

バックテストは、EAの運用前にロジックの「おおまかな傾向」や「想定されるリスク」を可視化するために役立ちます。しかし、バックテストの結果はあくまで「過去データ上でのパフォーマンス」であり、将来の運用成績を保証するものではありません。特に最近の「TACO相場」のように、政治要因で急激な相場変動が繰り返されるケースでは、バックテスト成績通りにいかない場面も多くなります。

そのため、掲載するバックテスト成績は「モックアップ」として参考までにご覧いただきたいと思います。フォワードテストの進捗やリアルタイム運用での変化は、今後別記事やSNS等で随時ご報告する予定です。

4. 各EAのバックテスト結果(モックアップデータ比較)

ここでは、独自開発した各EA(Beatrice Zenon、Shamir、Elion、Ariel)について、バックテストの主要な成績をサマリー形式でご紹介します。
それぞれのEAは異なるロジックやリスク管理方針を持っており、対象通貨ペアやパラメータも異なります。表や主要指標を通じて、その特徴やパフォーマンスの傾向が一目で分かるようにまとめました。

バックテスト主要指標比較(2015〜2025、Arielのみ2010〜)

EA名通貨ペア総損益プロフィットファクター最大ドローダウン勝率取引数
ZenonUSDJPY488,2171.9432,529 (2%)66.19%562
ShamirEURUSD1,943,7802.1934,731 (1%)61.40%1,518
ElionUSDJPY664,5561.6679,191 (5%)73.81%1,012
ArielUSDJPY461,1391.5427,936 (3%)72.86%2,782

● Beatrice Zenon

USDJPYを対象に、比較的ミドルリスク・ミドルリターン型のロジックを採用。勝率66.19%、最大ドローダウンも2%台に抑え、全体的に安定した挙動が特徴です。バックテスト上は大きな連敗は少なく、リカバリー力も高めと評価できます。

● Beatrice Shamir

EURUSD専用EA。勝率は6割超で取引回数も多く、プロフィットファクター2.19とバランスの良い成績を記録しています。最大ドローダウンも1%台に抑えられており、やや堅実な動きが印象的です。

● Beatrice Elion

USDJPY向けで、比較的アグレッシブな設定も選べる設計。最大ドローダウンは5%とやや大きめですが、勝率73.81%と高め。短期的な連勝・連敗パターンも見られ、相場の波に乗りやすい反面、急変動時の管理も意識する必要があります。

● Beatrice Ariel

長期間(2010年〜)のバックテストデータを持つUSDJPY専用EA。勝率72.86%、最大ドローダウン3%。総取引数が多く、1回あたりの損益は控えめながらコツコツ型のパフォーマンスが光ります。

※ご注意

これらの成績は、あくまで過去のデータをもとにしたバックテスト結果(モックアップ)です。
直近の相場環境や、政治的要因に起因する「TACO相場」など、現実の運用では予期せぬ値動きが発生することもあります。
バックテストデータだけに過信せず、運用時は常に最新のリスク情報にも目を配ることが重要です。

5. 技術的な工夫ポイント・運用上のアドバイス

私が開発したEA群は、いずれも「過度なリスクを取らず、安定性を重視した運用ができること」を前提に設計しています。売買ロジックの細部は各EAごとに異なりますが、共通して以下のような技術的工夫安全対策を重視しています。

● 技術的な工夫・安全性確保

  • スリッページ・スプレッド管理
    不安定な相場環境や突発的な値動き時にも過度な不利約定を避けるため、スリッページやスプレッドの上限を明確に設定しています。これにより、想定外のコスト増加リスクを軽減しています。
  • ロットコントロールと資金管理
    固定ロットやリスクパーセント設定、さらには必要に応じてマーチンゲール等の複数パターンに対応。最大ロット数や証拠金維持率の厳格な制御により、過剰リスクを自動的に回避するアルゴリズムを実装しています。
  • ドローダウン制御
    最大ドローダウンが一定値を超えた場合の取引自動停止や、ロット縮小、アラート通知など、異常時の「自動セーフティ」機能を内蔵しています。これにより、想定外の連敗や大きな資産減少時もリスクを最小限に抑える工夫をしています。
  • バックテスト段階でのロジック最適化
    バックテストデータの“最適化”には慎重を期し、「カーブフィッティング」(過去データに過剰適合しすぎて実運用で役に立たない状態)にならないよう、実装ロジックの複雑化をできるだけ避けています。

● 実運用時のアドバイス

  • 現状はあくまで「技術サンプル」
    本EAは販売を目的としておらず、現時点で配布やライセンス提供の予定もありません。今後も商用販売の意向はなく、技術検証や自分自身の資産運用、ノウハウ蓄積を主眼としています。
  • シグナル配信・ロジック提供には興味あり
    日本国内の規制を遵守した上で、もし要望があればシグナル配信や一部のロジック提供、技術解説などには一定の興味があります。これは「EAの完成品を売る」のとは異なり、投資助言や戦略共有という形でのコミュニケーションを前向きに捉えています。
  • フォワードテストの進捗報告
    現在、バックテスト結果は公開していますが、実際のフォワード(デモまたはリアル口座)での運用レポートも今後定期的に公開予定です。現実の相場でEAがどのような挙動を見せるか、引き続き情報発信していきます。

EAを導入する際は「売上や成績の数字」に惑わされず、安全性・透明性・運用者自身の納得感を最優先にすることが、長く利益を積み重ねるための本質だと考えています。

6. よくある質問(FAQ)と注意喚起

ここでは、読者やFX自動売買に興味を持つ方から実際に寄せられることが多い疑問や、EAの利用にあたって特に注意すべきポイントをまとめます。
安全な運用やトラブル回避のため、ぜひご一読ください。

Q1:なぜEAを販売しないのですか?

EA自体の完成度には自信がありますが、「販売ありき」の運用は、サポート体制や利用者の投資スタイル、さらには国内外の金融規制との整合性など、様々なリスクを伴います。
また、日本国内でのEA販売には法的な制約も多く、少しでも曖昧な部分があればトラブルに繋がる恐れも否定できません。
こうした背景から、現時点ではEAを個人向けに販売・配布する考えはありません。

Q2:シグナル配信やロジックの一部提供は可能ですか?

EA自体の完成品販売は行いませんが、日本国内の規制を遵守した範囲での「シグナル配信」や、アルゴリズムの一部アイデア共有には前向きです
特定の売買ロジックや、市場分析の知見を必要とされる方は、個別にご相談いただければ対応可能な場合もあります。

Q3:バックテスト成績だけでEAの良し悪しは分かりますか?

バックテストはあくまで過去データでの「シミュレーション結果」です。
特に近年の「TACO相場」のように、政治要因や突発的なニュースで相場が大きく乱れる場面では、過去のバックテスト成績通りに運用できる保証はありません
実際の運用前には、必ずデモ口座でのフォワードテストや、リアルタイムの成績も十分に観察することをおすすめします。

Q4:運用リスクについてどう考えれば良いですか?

どんなEAにも必ずリスクはあります。勝率やプロフィットファクターが高いからといって「絶対に損しない」ことはありません。
大切なのは「どの程度のドローダウンに自分が耐えられるか」「不測の損失時にどこで損切り・運用停止を判断するか」を事前に明確に決めておくことです。

Q5:運用やロジックに関する問い合わせはできますか?

個別の運用相談やアルゴリズムに関するご質問も、内容によっては可能な限り対応します
ただし、助言内容はあくまで技術的な見解や一般論に限り、具体的な投資判断や売買指示を直接行うことはありません。
あくまで「自己判断・自己責任」が原則ですので、ご理解いただけますと幸いです。

<注意喚起>

  • EA利用は投資判断の一助であり、必ず損失リスクがあります。
  • 特に、「誰でも簡単に儲かる」「絶対に負けない」といった過剰な宣伝には注意してください。
  • 正しい知識と冷静なリスク管理こそ、長く安定した運用を続けるためのカギです。

7. まとめ・免責事項

本記事では、私自身が独自に開発したMT5用自動売買EAの技術サンプルについて、その設計思想からバックテスト結果、技術的な工夫、運用上の注意点まで幅広くご紹介しました。
EAは「完全自動化」された便利なツールですが、その本質はあくまで“戦略の一つ”であり、過去の実績が未来の成功を約束するものではありません。

私のEAは、過度なリスクを排除し、保守的かつ堅実な設計を重視しています。
また、現状ではEA自体の販売は行っておらず、必要に応じてシグナル配信や一部ロジックのアイデア共有、技術的なアドバイスに限定してご対応しています。
これは、「透明性」と「利用者との信頼関係」を最優先に考えているからです。

バックテストデータも“モックアップ”として参考情報に留め、実際の運用は必ず自己責任で行っていただく必要があります。
相場環境は常に変化し、政治や経済の突発的な出来事――とくに最近の「TACO相場」など――によって、思わぬ変動が起こるリスクも決して小さくありません。
EAの活用は、必ずご自身のリスク許容度や資産状況に合わせ、冷静かつ計画的に行うことを推奨します。

今後は、フォワードテスト(リアル運用)の経過や気づき、技術的なトピックについても、当サイトやSNS等を通じて継続的に発信していく予定です。
EAや自動売買に興味のある方は、ぜひ引き続きチェックいただければ幸いです。

【免責事項】
本記事に掲載した内容は、投資助言や資産運用を直接推奨するものではありません。EAや自動売買による取引は元本保証がなく、損失が発生する場合があります。最終的な投資判断は、必ずご自身で行ってください。
記事内容や技術情報についてのご質問・ご相談は受け付けておりますが、個別案件に対する責任は一切負いかねますので、あらかじめご了承ください。

8. 関連記事・参考リンク

自動売買EAやMT5運用に関心のある方、さらに深い知識を身につけたい方のために、役立つ関連記事や公式リソースをいくつかご紹介します。実際の運用や開発のヒントとしてご活用ください。

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● 技術者・中上級者向けリソース

● その他、参考になるサイト・資料

  • 金融庁「自動売買ツール・シグナル配信等の利用に関する注意喚起」
    EA・シグナル配信を利用する際の国内規制や注意点について、公式情報をチェックできる。
    金融庁公式サイト
  • FX業界ニュース・最新トレンド
    TACO相場など、時事的な要素が強いFX業界の最新ニュースも日々追いかけることが大切です。
    Yahoo!ニュース(為替相場)

● 当サイトの関連記事(一例)

関連リンクや記事を通じて、EAや自動売買運用に関する理解をさらに深めていただければ幸いです。
また、ご質問やご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせフォームまたはSNSからご連絡ください。
今後も役立つ情報を継続的に発信してまいります。

バックテスト抜粋

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佐川 直弘: MetaTraderを活用したFX自動売買の開発で15年以上の経験を持つ日本のパイオニア🔧

トレーデンシー大会'15世界1位🥇、EA-1グランプリ準優勝🥈の実績を誇り、ラジオ日経出演経験もあり!
現在は、株式会社トリロジーの役員として活動中。
【財務省近畿財務局長(金商)第372号】に登録
され、厳しい審査を経た信頼性の高い投資助言者です。


【主な活動内容】
・高性能エキスパートアドバイザー(EA)の開発と提供
・最新トレーディング技術と市場分析の共有
・FX取引の効率化と利益最大化を目指すプロの戦略紹介

トレーダー向けに役立つ情報やヒントを発信中!

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